葛西美空とは何者か
2024年6月31日をもって、YouTubeやSNSでの活動を無期限で停止している葛西美空。今でも多くのファンが葛西美空についてSNSなどで語り、動画投稿がないにもかかわらず、YouTubeチャンネル登録者数は少しずつではあるが増え続けている。
初めて葛西美空を見た時、多くのファンは「何なんだ!?この人は!」と感じたのではないだろうか。そしてすぐにその強力な魅力に引き込まれていったことは想像に難くない。その魅力の正体がいったい何なのか、これ以降のいくつかの記事で「葛西美空」を分析をしていきたい。
※敬称は文字数を減らすため、省略しています。
記念すべき「葛西美空のYouTubeチャンネル」の第1本目の投稿動画
「YouTubeチャンネルができました(2022/4/1投稿)」
葛西美空の歴史
葛西美空の簡単な経歴をここでおさらい。
- 2001年6月22日生まれ、埼玉県出身、A型 ※事務所プロフィール .
- 2015年から、アイドルグループ「TOKYO5(トーキョーゴー)」のメンバー「石田ミク」として芸能活動を開始。※X/TOKYO5 (2024年9月1日時点確認).
- 2017年2月、雑誌「IDOL FILE TOKYO Vol.02(ISBN978-4-401-7622-4)」にグループのページとは別に「石田ミク」の個人のページが掲載されている。※X/IDOL FILE 編集部 2017年2月17日投稿 .
- 2017年8月9日、グループを卒業 ※X/TOKYO5 2017年8月8日投稿 (2024年9月1日時点確認).
- 2017年12月16日、TOKYO5 も活動を休止 ※X/TOKYO5 2017年12月15日投稿 (2024年9月1日時点確認)グループ自体もほどなくして活動を休止している。彼女たちはこの約2年間を文字通りに全力で駆け抜けたことになる。
- 2020年頃から、「ほくろ」の名前で TikTok で動画投稿を開始。※葛西美空(21:00投稿) (@kasaimiku_hirata) | TikTok .
- 2020年の後半頃に現在の事務所に所属し、「葛西美空」として活動を開始。TikTokの投稿動画「皆様お久しぶりです!元ほくろです!(2020年12月5日)※動画は削除済 」で、葛西美空として活動を開始する報告の動画を投稿している。
- 2021年、アニメーション映画「竜とそばかすの姫 「竜とそばかすの姫」公式サイト (ryu-to-sobakasu-no-hime.jp) 」に出演。※役名のない、ポニーテールのクラスメート役(20分48秒 頃).
- 2022年1月12日、日本テレビ放送のドラマ「真犯人フラグ 真犯人フラグ 真相編|日本テレビ (ntv.co.jp)(第12話)」に出演。※役名のない、犯人の噂をする若い女性役(6分33秒 頃).
- 2022年1月1日、Instagramに自身の投稿を開始
- 2022年3月23日、「葛西美空のYouTubeチャンネル」を開設。その9日後の4月1日に、「YouTubeチャンネルができました」を初投稿。
- 2022年10月17日から、日本テレビ放送の「ZIP!朝ドラマ クレッシェンドで進め 登場人物|クレッシェンドで進め|日本テレビ (ntv.co.jp)」 に主人公のクラスメートの楪(ユズリハ)役で出演し、本格的なドラマデビューとなった。
- 2022年12月24日、YouTubeで初めてのライブ配信を行う。
- 2023年4月、Twitter(現X)のアカウントを登録
- 2023年6月22日、初めて自身の22歳の誕生日に合わせて、YouTubeのライブ配信を行う。
- 2023年11月「TikTok Creator Awards Japan 2023(【Entertainment部門】Comedy Creator of the Year)」にノミネートされた。(惜しくも受賞は逃す)
- 2024年5月1日、YouTubeチャンネル登録者数が100万人を超える。
- 2024年5月15日、活動停止について、YouTubeでライブ配信でファンに報告を行う。
- 2024年6月22日,23日、初めてのファンとのオフ会を開催。
- 2024年6月30日、この日をもって、無期限の活動停止に入る。
葛西美空は何のカテゴリ?
現在の所属事務所と初期の活動内容から「俳優(声優)・タレント」とするのが無難であるが、2023年以降はYouTube,TikTokでの動画投稿、X,InstagramでのSNS情報発信を活動の中心にしており、この期間においては「YouTuber」とするのが妥当であろう。
しかしドラマ「クレッシェンドで進め」で楪(ユズリハ)役を演じたことが、葛西美空のキャリアを確固としたものにしたことは疑いようがなく、「俳優」の肩書を筆頭に置くのが妥当と思われる。 ※近年の意識変化を鑑み「女優」ではなく「俳優」と表記しています。
葛西美空自身は自らの活動について、主にYouTuberとして動画投稿、SNSでの発信(インフルエンサー)をメインに活動することについて事務所の理解を得ていることを語っている。
葛西美空の動画投稿の実績
葛西美空のキャリアは俳優から始まっているが、多くのファンを獲得した要因は、なんといってもYouTube,TikTokでの投稿動画である。
YouTubeでは約2年3か月の期間と、TikTokのみで投稿されている動画を合わせると、合計で1500本 (*1) に迫る本数の動画を制作し投稿している。※ (*1) 本記事作成時に確認した動画本数は合計で1442本だが、TikTokでの初期の投稿動画も含めれば1500本以上はあると思われる。
表1:葛西美空の投稿動画の本数
※2024年6月30日時点で確認できた投稿動画の本数。[ ]内の数値は、活動停止後に削除されずに残っている動画の本数(2024年10月10日時点での確認)
投稿サイト | 動画の本数 | 動画の種類 | 動画の本数 | 備考 |
---|---|---|---|---|
YouTube | 1220本 [ 967本] | 動画(ロング動画) | 198本 [ 146本] | 2024年7月以降、YouTubeで削除された動画のうち、112本はTikTokでは残されている。 |
ショート動画 | 924本 [ 820本] | |||
ライブ配信 | 98本 [ 1本] | |||
TikTok | 1109本 [ 958本] | TikTokのみの動画 | 222本 [ 86本] | YouTubeに投稿された動画のうち、44本がTikTokでは諸事情で非掲載となった。 |
YouTubeと同じ動画 | 887本 [ 872本] |
表2:葛西美空の投稿動画の種類別の比率
注目すべき点は、YouTubeのロング動画で 198本中 95本(48%)、YouTubeのショート動画に至っては 924本中 890本(96%)が「シナリオのあるネタ動画」になっていることである。
リアクションやコミカルな動きの…敢えて表現すれば “ただの悪ふざけ” のような動画は皆無で、ダンス系や流行りのネットミーム系の動画はTikTokの初期の頃のみで、YouTube でのチャンネル開設以降は『無駄な時間のない極めて練り上げられた内容』の動画を投稿している。
そしてこれら動画のシナリオには、事務所が契約した作家などは存在せず、全て葛西美空が作ったシナリオなのである。この点こそが葛西美空の最大の特徴と言える。
付け加えると、YouTubeロング動画の平均時間はたったの3分、YouTubeショート動画の平均時間は40秒である。旅行や料理などが題材の “VLOG動画” でさえ、説明などの尺を極限まで切り落として独特のスピード感のある動画に仕上げている。
YouTube動画の場合、収益を意識して10分近い動画の長さにする投稿者が多い中、葛西美空の動画の短さは「自分が作りたい動画に対する潔さ」を表していると言える。
葛西美空の名刺
葛西美空は、2023年後半頃に自身の名刺を作成し、Xで公開している。そこには「 Comedy Scenario Writer(コメディ シナリオ ライター)」と書かれており、葛西美空自身も「シナリオのあるネタ動画」が最大の売りであることを自認していることが伺える。
葛西美空の名刺の模写
※葛西美空の名刺の画像は使用できないため、模写したものを以下に例示します。一部の情報は写していません。名刺の裏面には葛西美空とハムスターのイラストが描かれていました。※許可を得ていないため掲載をしていません。
葛西美空の魅力
葛西美空の魅力の本質
葛西美空の魅力とは何かを1つ1つ挙げていくと、
- 動画で見せる独特の世界観
- 動画で見せる多彩な編集
- 動画で見せる多彩な声色
- 動画で見せるコミカルな演技
- ネタ動画のシナリオの秀逸さ
- 多彩な声色から繰り出される歌唱
- 動画を毎日投稿する努力
- ユーモアが盛り沢山で親しみのもてるライブ配信やSNSでの投稿
- 人から見られる存在としての相応のルックス
- 人を笑顔にしたいという心
- 周囲の人やファンへの感謝(気遣いと責任感)
恐らく、これだけでは表現しきれないのかもしれない。これらの全ては、葛西美空が作成する動画やSNSなどでの投稿に強い魂を吹き込み、それを感じ取った多くのファンが魅了され、引き込まれているのだと言える。
2年と1ヶ月でYouTubeチャンネル登録者数を100万人に到達させることは大変な偉業である。ただそれは決して珍しいことではない。チャンネル登録者数や動画再生数の実績だけ見れば、既に多くのYouTuberやインフルエンサーが達成している内容である。また日々年々、新たな才能も生まれてくる。
しかし、ネタ動画のシナリオを自ら作成し、自ら器用に演じ、自ら編集し、ほぼ毎日投稿できる人物をかつて見たことがあるであろうか?。本記事の冒頭で述べた「何なんだ!?この人は!」という未知に対する驚嘆の感覚は、これこそが、葛西美空の魅力の本質であると言える。
初期の動画作品からただ者ではない
葛西美空を「ただ者ではない」と感じる初期の作品。「リップ貸して」に「ちょっと嫌だな」と似たような経験は多くの人が学生時代などにするものだが・・・YouTubeへの投稿を開始して、1ヶ月目の初期の作品。
「リップを貸すのはちょっと嫌だな」の相手の気持ちを見透かして、『プロレベルの気遣い』を見せて視聴者の予想を裏切っていく初期の快作。ほとんどの人は、他人とリップのようなものを共有したくはない筈だ。多くのクリエーターであれば、リップ貸しての『図々しさ』を大げさにする方向にスポットを当てそうだが、真逆の『気遣い』にスポットを当て、「え、そっちなの?!」と視聴者の予想を裏切るシナリオ。また、「そこまで潔癖症なのに、何故、リップ貸してと言うの?!」という謎も笑いに繋がっている。予想外のことに翻弄される主人公のコミカルな芝居も、葛西美空の魅力を存分に表現している。
「「リップ貸して」って言う奴(2022/5/3投稿)」
2022年5月は、まだ多く人が「葛西美空」をよく知らない時期である。そんな時期にここまで作りこまれたネタ動画を見せられた視聴者が、「この人はただ者ではない」と感じたことは、疑いようがない。これはそんな作品の例である。
この記事の後書き
葛西美空は自身のアイドル時代についてあまり多くを語りたくないと述べていた。また、Xなどでアイドル時代に感じていた苦悩について語ったこともあり、とても繊細な人物であることが伺えるし、その心情は最大限に尊重しなければならない。
しかし、アイドル活動への挑戦が無ければ、今の「表現者としての葛西美空」は存在しなかったのではないだろうか。今なお、葛西美空の存在と才能は多くのファンを引き付け、そして同様に悩みを抱える子たちに勇気を与えているのであるから、TOKYO5のメンバーであったことが、賞賛に値することは確かだ。
TOKYO5の活躍については、現在もYouTubeにチャンネルが存在し、彼女たちの躍動する姿を確認することが出来る。(2024年9月1日時点)
改めて、TOKYO5のグループメンバー全員とスタッフ一同、周囲の方々、TOKYO5のファンの皆様に敬意を表したいと思う。